2022年7月1日金曜日

“参議院とは何か”改めて問う

 まもなく参議院選挙の投票日ですが、ここで改めて「参議院とは何か」、「そもそも参院に何が期待されているか」を考えてみたいと思います。

 いま街中で、各党、各候補者は改選議席124をめぐり絶叫調で訴えていますが、よく聞いていると、物価対策とか社会保障、防衛費の増額といった話ばかりで、財源をどうするかという話もなく、まして上院にあたる参議院で何をやるか、参院にこうした役割があるから自分は立候補しているという話も殆ど聞かない。

衆院選で落ちたので、今度参院選に出ましたという程度の話が多い。こうした方々が当選後、248議席もある参議院で何をやるのでしょうか。結局、議員になればよい、衆議院と「同じことを2度やる」、二番煎じで構わないということになってしまわないか。私達はこれまで参議院は「良識の府」だと教えられてきましたが、どうもそれは虚構ではないのか、この点を吟味してみる必要がある。

少し海外と比較します。日本の面積は、米国カリフォルニア州1州と同じですが、あの広大なアメリカですら参議院に当たる上院は100名でやっています。全米50州から規模に関わりなく2名ずつ選ばれる。カリフォルニア州は米で2番目に広く人口の1番多い州ですがそれでも上院議員は2名しか選ばれない。

これに比べてどうでしょう。同じ面積の日本には248名もの上院議員に当たる参院議員がいる。衆議院に465名もいる。国情に違いはあるとはいえ、こんな狭い日本で、衆参合わせ713名もの議員が要るのかどうか。私の計算ですと、直接間接合わせ1議員に年間約1億円の経費が掛かっていますが、これだけカネをかけて私達は、何の解決を期待しているのか、よく考えてみる必要がある。

私ごとですが、2週間ほど前、東京である有識者の会に招かれ、「参議院とは何か」「何を期待するか」というテーマで1時間半講演する機会がありました。政府各省の局長などを経験した方々の集まりでしたが、政府委員として答弁した方々からもいろいろ意見が出て面白かった。以下、私なりに整理してみます。

少し基礎的なお話から。世界の議会制度を大別すると一院制と二院制に分かれます。概ね一院制が6割、二院制が4割となっていますが、日本ように二院制を採用する国は、国民の多様な階層や意見の違いを幅広く国政に反映させるために採用され、上院(参議院)に下院(庶民院、衆議院)の独走をチェックする機能を持たせている場合が多いです。

その上院ですが、そのタイプは大きく3つに分かれます。第1はイギリスのように貴族制度をベースにしたもの、第2はドイツ、アメリカのように連邦制をベースに州を代表するもの、第3はフランスのように地方とか自治体代表が上院議員を兼務する形のもの。

今の日本の参議院は、このいずれでもなく、衆参院とも国民代表機関とされ、選挙制度も似通っている。ですから衆院がダメなら参院があるさ!の立候補者も生まれてくる訳です。日本の二院制は「熟議」が狙いでしょうが、実際は衆院と「同じことを2度繰り返す」ということに止まっている。つまり参院の独自性が殆ど見られない。だから廃止すべきだという意見も出てくる訳で。

私は、参議院廃止、一院制への移行には賛同しませんが、主要国を見れば分かる通り、生かした方次第で二院制の良さを発揮できると考えるからです。

結論的な話だが、参院を国民にとって有益な立法機関に変えるには、次のような改革を進めたらどうかと考えます。論点は6つほどあります。

第1.参議院の性格付け~再考の府なのか、地方の砦なのか、ハッキリする

第2.ここが一番重要ですが、二番煎じの府を脱するには3つの独自性を持たせること。①地方の代表、②政策過程の中で政策評価、決算、見直しを担当、③衆院と違う長期展望の議論と専門性の高い掘り下げた議論をする。

 第3.候補者は小選挙区のような衆院と全く違う、専門家や地方代表を選ぶ

 第4.所属はともかく、審議過程では「党議拘束は外し」自由な採決とする

 第5.立候補者の被選挙年齢を現在の30歳から25歳に引き下げる。

 第6.衆参同時開会、同時閉会の「会期制」ではなく参院は通年議会とする

 このほか、女性議員を増やす、専門家を増やす、業界、労組など特定団体に偏らない、普通の人が選ばれる、それにはクオータ制(割り当て)の導入も。

 さらに参院は47都道府県を基礎とする選挙区ではなく、もっと広域の東北とか関西とか九州といった広域圏単位で選ぶ、全国比例制のウエイトを高めるなど、いろいろ工夫し改革すべき点はあります。

 いずれ、国民生活の3分の1を占める公共分野の予算や法律、税制、防衛などの骨格を決める立法機関として、日々の変化に素早く対応すべき衆議院とは違う、①長期展望、②決算、政策評価、修正、そして③170兆円超える日本の行政活動の3分の2を担う、地方自治体の意見を反映させる、そうした役割をもつ参議院に変えるよう、大改革改革が必要です。それには直ちに国会に学部有機者らの集う第3者機関を設置し、議論を始めたらどうでしょうか。

参院議員には任期を6年間与えています。この長所を生かすことです。常在戦場と言われ落ち着きのない衆院とは異なる、中長期のビジョンや政策見直し、地方の民意を反映できる参議院に変える。そうした改革マインドをもった方を議員として選ぶ、それも7月10日の参院選の意義ではないでしょうか。

#参議院 #参院選 #国会


 

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