もう1つの“2025年問題”
“団塊世代”全てが75歳を超え、医療、介護、年金等の社会保障が大変になることを「2025年問題」というが、忘れてならないはインフラも同時に老いるのが日本。
50年前、高度成長の波に乗り集中的に道路、港湾、橋、上下水道、歩道橋、学校、公共施設、地下鉄、鉄道、高速道など多くの都市インフラを整備した日本。それがこの先、一斉に寿命(耐用年数50年)を迎え、崩壊の危機に遭遇するという話。これが“もう1つの2025年”問題だ。
コロナ感染症で私たちの生活は大変だが、それとは別にもっと中長期に深刻な問題がこれだ。「老いるインフラ」問題。先日、「トンネル4割寿命/修繕費膨張年12兆円も」という記事が新聞紙上で躍った(日経新聞2月6日1面トップ)。道路橋なども6割超とか。
国土省によると、建設後50年以上経つ橋梁は2021年3月時点で全体の32%、トンネルは23%を占め、10年後にそれぞれ57%、37%に増えるという。水道管も総延長の17.6%にあたる約13万キロが耐用年数を超えているそうだ。
これは更新にせよ、廃棄にせよ、膨大な費用と時間が要る。しかも人口急減の中、どの規模で更新するのが適正なのか、誰も分からない。そもそも財政難や技術系職員の不足でそう簡単に対応できていないという話も聞く。
これは全国的な問題だが、特に国土の0.6%という狭いエリアに国民の1割以上が集中する東京都は大問題だ。東京一極集中は日本の機関車だからと是認する見方もあるが、最大のアキレス腱は”老いるインフラ”事故で東京が破壊され、全国に被害が及ぶことだ。
台風など暴風雨で変電所が壊れ大停電になる。すると林立する超高層ビル・マンションに何日間も人が閉じ込められ死傷者まででる。デマ情報で街の人々は食料を買い漁る。道路は横倒しの電柱に塞がれ、鉄道、地下鉄は完全にストップ、経済活動も止まる。近いうちに首都直下地震が必ずくるという。すると、老いるインフラは想定以上に脆いのでは。
政治は、もっと巨大都市の脆さを直視すべきではないか。
日本全体では集中豪雨や台風、地震など大災害時を除いて、これまで整備した橋やトンネル、下水道や学校、公共施設など都市インフラの補修に年間5兆円が必要という(国交省)。これに取り換え、更新まで加えると8兆円は下らない。すると、いま国の一般会計予算の公共事業費は約6兆8千億円だから、もう道路、橋などの新規事業に回すカネはなく、更新や補修で毎年の公共事業費が消えていく計算になる。
もとより、実際のインフラ整備・補修の多くは地方自治体の管轄下にある。今の中央地方関係は自治体の事業を国が3分の1補助する仕組みが多いが、こうしたインフラ更新・補修もそうだとすると、自治体は3分の2の自己負担を強いられる。3割自治という乏しい自主財源しかない各自治体にこれに耐えられるだけの体力があるか。そうは思えない。
勿論、機械的に耐用年数50年で一斉に橋が落ちるとか、道路が陥没するという話ではない。しかしコンクリート、木材、鉄を素材とするインフラだけに脆くなっている。ある日突然、それがわっと表に出る。最近増えている集中豪雨、台風、地震などで一気に崩落し、大参事につながる可能性すらある。これを想定外の事態とは言わない。“備えあれば憂いなし”国と地方はカネを掛けても計画的に更新し危機に備える必要がある。
人の命と暮らしを守る!それが政治の役割というが、どうもその動きが鈍い。
#老いるインフラ https://sasanobu.blogspot.com/
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