にわかに「田園都市構想」が注目を集めている。岸田首相が地方創生をめざす「デジタル田園都市構想」を打ち出したからだ。具体化に向け大規模な交付金制度も盛り込むという。もっとも未だ中身はわからないが、安倍政権以来続く地方創生策と、どう違うのか。担当部署がこれまでの内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局と内閣府地方創生推進本部だとされるだけに余計分からない。
いま提案されている「デジタル田園都市構想」は、デジタル技術を生かして地方でも都市並みの仕事ができるよう西、所得格差などの解消を目指す。地方でもデジタル活用を促す交付金を設けるほか、高速通信網やデータセンターなどの基盤への投資を推進するとされる。こう聞くと、どうやらデジタル庁の進める仕事の地方版かなという気もしてくる。
交付金で「デジタルを活用した地域の自主的な取り組みを応援する」と強調する点を捉えると、これまでの地方創生策とあまり違わない。人や企業が地方に向かう流れを大きくする方向は同じで、それに必要なデジタル基盤の整備に力を入れる話か。これだけなら高度通信規格の5Gやスマート社会のソサエティ5.0を推進する話とそう変わらない。その辺、言葉で新しさを出すのではなく、中身で新しさを打ち出して欲しい。
もっとも、地方の衰退が続く日本の状況からして何らかの手を打つことは必要である。やり方によっては効果的な方策になるかも知れない。
元祖「田園都市構想」は大平正芳首相の掲げたものだ。田園と都市の入り組んだ風景を想起される同構想だが、それは人口10万~30万人程度の地方中核都市を中心に,周辺の都市,農村を結合して形成される地域社会を田園都市圏と定義づけ,全国で200~300に達するこれら田園都市圏のネットワークを形成することにより,全国土の均衡ある発展をめざすとされた。戦後日本では、大都市郊外の鉄道沿線で,駅を中心に公共セクターや民間セクターにより大規模な宅地開発が行われ、宅地難解消に向けた過小宅地が多く、乱開発が目に余った。こうならないよう質の高い田園都市をめざすべきとアンチテーゼとして出された性格も持つ。だが、これは実現することなく乱開発は進み、郊外都市はアメーバーのように拡大。
むしろ、いま流に解釈すると、筆者は藻谷浩介氏のいう「里山資本主義」という考え方にこの田園都市構想の中身が含まれているような気がする。商社など大手資本が進出し何万羽と鶏を飼う大量生産方式、世にいうマネー資本主義の考え方と里山資本主義は対照的考え。
ただ儲けるだけでは続かない。ほどよく儲けつつ事業も社会も持続可能なものにして共存して行こうという考え方が里山資本主義。日本で成功している多くの農村を調べると、こうした実態をみてとれる。この考え方は、農水省の進める農政に一石を投じている。
地方の農村でリンドウ栽培日本一の優れた技術を開発し、全国の顧客を大事にし、生産者の顔の見える形で手作りのリンドウ栽培を続けている方がいる。これはまさにそれを地で行くもの。新自由主義からの転換を目指す岸田政権の「成長戦略4本柱」の一つが「デジタル田園都市構想だが、デジタルインフラの整備による地方振興に加え、中小規模の都市と農村が入り組みうまく共存できるような「里山田園都市」構想があってもよいのでは。
もとより、同時に東京一極集中をどう解消するかの手も打たなければうまく行かないのではないか。東京2割減反といった、大胆な集中解消策の打ち出しを同時に期待したい。
#田園都市構想 #地方創生
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