2022年2月16日水曜日

地方議員のなり手がない、地方自治の空洞化をどうする

    地方議員のなり手がない、地方自治の空洞化をどうする
 よく夏の参院選が話題になるが、もっと身近な地方選挙はどうか。毎週どこかで地方選があるが、ざっと見ると次のような問題を抱えている。
①投票率が回を重なる度に低下し5割を切る、➁無投票当選が増え、県議、町村議で約2割、首長選では3割近い、③未だ女性のゼロ議会が2割もある、④小規模自治体を中心に議員の「なり手不足」が深刻になっている。
 国の予算は話題になりやすいが、地方の予算は話題から外れがちだ。でも行政全体の3分の2は地方で行われ、カネが使われている。私たちの生活に直結しているのだ。
地方議会は行政監視を担うとともに、予算や事業の最終決定権を握っている。首長と並び、自治の「車の両輪」といわれる。その権力の源泉は選挙での有権者の支持、つまり民意を託されているからだ。
 無投票が増えると、議会と民意の関係を希薄にしてしまう。このままでは、有権者が選挙で権力を形づくる民主主義の基盤が崩れ朽ちてゆくばかりだ。放置してはならない。
 無投票が増えた理由のひとつに、大政党に有利な1人区、2人区が全体の7割を占める選挙区割りがある。過疎化に伴う定数減などで、70年前は2割弱だった1人区が今や4割を超える。選挙に強く強固な地盤を築く現職に、新顔が挑みにくい構図が広がっている。1強他弱の政党関係、野党の弱体化も地方選を不振にしている一因だ。
戦後の地方自治は、特定の名望家や専門家を“選挙なし”で任命することも、世襲制や多額納税者を議員として処遇する制度も認めていない。法のルールに沿って、首長も議員も4年ごとに選挙される。この点だけを捉えるなら、フェアーな制度といえようが、いま挙げたような構造的な問題を抱えてしまっている。
例えば無投票当選の問題。これは①選ばれた方も選ぶ側も政治的正当性を認められない、②有権者の政策選択の機会を奪う。無競争当選という選挙制度は正しいのか。無競争当選が増えている実態をみると、基本的に選挙すると意味は何だろうか、当選とは何を意味するかを考えてみる必要がある。
 選挙は、公権力行使の免許状の書き換えを4年ごとに行う儀式とも言えよう。選挙から選挙の間に、住民の代表として信託を受けた政治のプロとして著しい落ち度があった時の免許状の取り消しをする。現職を落選させるという意味はそのようなもの。
選ばれて代表の地位に就く意味は、「自治体としての意思を公式に決定できる権限を持つ」ということだが、簡単にいえば公権力行使の免許状を与えるということ。
 代表を選ぶというのは1つの擬制(フィクション)であり、「もともと違う人間が別の人間の意見や利害を代わって表現はできないが、代表という考えは、本来できないことを約束事として、そうみなそうという工夫」なのだ。
なぜ無投票が増えるのか、その背景はいろいろ複合しているように思う。
第1.この30年間、経済の実質成長率ゼロのなか、税収も伸びず、政策をめぐる裁量の余地が減り、議員として腕を振るう魅力がなくなってきている。
第2.若手、中年層を中心に職業の安定志向が強まり、あえて4年ごとにリスクを追う政治家(議員)に挑戦しようという気概(政治家の魅力も)がなくなってきている。
第3.議員に選抜される母集団が構造的に狭まっている。サラリーマン社会にもかかわらず、サラリーマンが議員職を兼ねることができず、勢い自営業者か無職者のみの戦いになっている。事実上、8割近くを占めるサラリーマンが公職につくこと排除している。
第4.報酬の削減が続き、経済的な魅力に欠け、また相次ぐ定数削減で新人の出る余地が狭まり、現職優先、現職の議席既得権化が進み、新人の当選可能性が低下している。
といった要因が考えられるが、しからば今後どうしたらよいか。
相当大ぶりの抜本的な選挙制度の改革でもしないとこの流れは変わるまい。改革の方策はそう多くないと思うが、そうはいっても放置はできない。
例えば、
第1に、基礎自治体の議会を土日・夜間開催の方向で改革できないか。そして民間会社等に勤めながら議員を兼職できる「公職有給休暇制度」を創設する。これでサラリーマンなど勤労者が議員を兼ねることができ、立候補者の母集団を飛躍的に拡大できる。世の批判にある「報酬が高い」という点も議員手当て、実費弁償に変わるので急減しよう。 
第2に、その上で、極端に年齢層、性差が高齢層、男性層に偏っている現状を変えるには、定数の中に年齢枠と女性枠を設けること。立候補自由の原則に反するとの意見もあろうが、「議会は民意を鏡のように反映する」ことが望ましい政治機関なので、例えば20~40歳代が4割、50~70歳代が4割、残る2割は年齢枠外のその他自由とするなど考えられないか。加えて、女性が当選できるよう各枠のクオータ(割当)制度などを入れ、30%を女性枠とし、将来これを40%、50%へと拡大して行ったらどうか。
第3に、大都市、府県議会など広域で議員数も多い自治体の場合、議員を2種類に分ける考え方も(事実上2院制)あるのではないか。少数の常勤の「参事議員」と、多数の非常勤の「一般議員」を選び、一般議員は専門性を持つ参事議員で決めた内容を、庶民感覚で議論し修正する役割を持たせる。参事議会はウイークデー開催でも構わないが、一般議会は土日・夜間開催とする。
といった改革案が考えられるが、これには自治法改正など法整備が要る。でも座して待つほど時間はない。実態は草の根民主主義の根が枯れ、この国の危機とも言える状況だ。
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