2022年2月19日土曜日

“緊急事態”を理由にする拙速な改革の罠。国の指揮権強化でうまく動くか

 新コロナ禍の対応で保健所、病院の機能不全が露呈した形になった。そうしたこともあり、保健所に対し国が直接指揮命令できる仕組みを考えようという話が出てきそうだ。岸田首相は総裁選の時から「健康危機管理庁」の創設を提唱している。

国には「大規模感染流行時には、国がより明確かつ強固な司令塔となり、かつ地域の現場に至る各関係機関が必要な対策を遅滞なく、統一的に講ずる必要があり、有効な指揮命令系統の確立とその徹底こそが焦眉の急」(国の行革推進本部)という認識がある。

こうしたことから、例えばだが、緊急時に一時的に自治体が所管する保健所を国の保健所と読み替え、国の大臣が直接府県や政令市、中核市、特別区の保健所に指揮命令できる「国の出先機関化」するということもイメージされる。それでうまく動くのか。

確かに日本は2000年の地方分権一括法の施行以降、国が地方に通達(命令)を出せない仕組みになっている。双方は役割の異なる対等な政府間関係にあるという認識からだが、国側からするとそれは不自由であるということなのかも知れない。

だから、ざっくり言うと2000年の地方分権改革以前の国と地方の関係、上下主従の関係にあった機関委任事務制度下の中央地方関係に戻すべきだ、国が優位の立場に立ち地方を指揮監督する、分権改革以前に回帰すべきだと言っているようにみえる。

だが、国民に身近な生活の場で感染症は起きている。コロナ感染症は政令市、中核市、特別区という大都市(国民の約5割が住む)で80%以上発症している。

いまの国の対応、縦割り行政と責任の所在が発揮しない省庁体制に任せるより、ここはむしろ、大都市自治体に権限、財源を移譲・強化して自治体主導の体制を明確にした方が迅速で痒いところに手が届くのではないか。政令市など府県の権限を併せ持つ都市自治体の権限強化が望ましい方向と考えるがどうか。

いま全国20政令市で構成する政令市長会は特別自治市(いわゆる特別市)を提唱している。もちろん、これは感染症の問題を視野に言っている訳でないが、昭和31年の制度創設から半世紀以上経ち、制度の不備、機能不全が目立つからの提言だ。

これはいわゆる大阪都構想と違う。大阪の場合、大阪市を廃止し広域的な仕事と財源を

大阪府に集約する構想だが、「特別市」構想(筆者はこう呼ぶ)は逆のアプローチで、政令市がこれまで県が持っていた権限、財源を担う、さらに強化し自立する改革案だ。

警察や府県税など都道府県の業務と財源を市に移し、都道府県から事実上独立した特別市をつくるというもの。特別自治市と呼んでいるが、これは戦後地方自治法でひと時認められた「特別市」を復活させる構想に近いもの。

こうした強い権限構成の特別市に府県と連携し医療機関に対する指示命令権などを付与することで、感染源となっている大都市の問題処理が可能となる。この考え方に中核市や特別区の権限強化を加えてもよい。

要は国民から遠い政府、統計数字でしか動きを読めない中央省庁より、生活に密着した現場自治体の自治権を強化して緊急事態を乗り切る方が有効ではないか、ということだ。

 緊急事態宣言に安倍首相「政権の命運」の賭け | 国内政治 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

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