2022年2月20日日曜日

憲法改正の新たな視点 参議院を”地方自治の砦”に

  連日、国会審議の模様が報道されている。予算案はまもなく衆院を通過し参院の審議に付される動きだ。参院ではより深掘りの審議が望まれる。

ただ、参院の可否に関わらず、年度末に予算は成立する。どこか無力感はないか。憲法上の定めによるが、予算に限らず他の案件でも参院は衆院のカーボンコピー視されがちだ。両院とも与党が多数を占めている場合は余計そうである。

もう少し充実した審議のできる国会に変えられないか。そこで2つ提案したい。

1つは、衆参両院の役割分担を見直したらどうか。例えば、政権選択は衆院で行い、参院は「再考の府」「良識の府」として異なる観点から審議する。衆院は予算案や法案の中身、参院は決算や行政監視に重点を置くような運営が考えられる。

予算は政策を凝縮したものだが、政策のPDCAサイクルからいえば、P(形成)は衆院中心、C(チェック)とA(見直し)は参院中心といった分担はどうか。既に日本は右肩上がり社会は終焉しており、これからの右肩下がり社会は「あれもやります、これもやります」式の政治は通じない。「あれをやめます、これを見直します」式の政治への切り替えも必要となってくる。CとAの場面が重要度を増してくるとみてよい。

もう1つは、“地方のことは地方で決める”地方主権型の国づくりをめざす日本。だが、行政社会主義国家ともいわれる中央集権的な色合いがなかなか消えない。もっと分権化を進めて身近な地方の政府が意思決定できる仕組みに変える必要がある。

2000年以降、そうした視点で改革を始めたが、いま停滞している。

「地方分権」は、行政権を国から地方に移すことと考えがちだが、それ以上に自治権拡充にとって大事なのは立法権の移譲だ。この立法権の移譲は政策、制度の企画立案権の移譲と言ってよい。この企画立案権を国から地方に移すにはどうすべきか、分権改革の基本的な課題はここだ。


それには中央集権的な法令がこれ以上増えることを抑制し、地方自治を不当に制約している既存の法令等の改正を進めることが不可欠だ。これをより確実に実現していくためには、国の立法過程に地方の意見を有効に投入できる恒常的な仕組みをつくる必要がある。「参議院を地方代表の砦」にできないか。

日本の行政活動の3分の2は地方が担っている。これから参議院の独自性は「地方の国政参加の場」、それを明確にするのが1つの改革方向ではないか。

例えば、ドイツには一院制の連邦議会とは別に、副次的な立法審査機関として各州の代表で構成される「連邦参事院」がある。連邦議会を通過成立した内政に関わる法案は必ず連邦参事院の審査に付され、この連邦参事院で修正・否決された場合は、もう一度連邦議会の再議に付され、その再議決によって確定する仕組みにある。

連邦参事院に連邦議会の議決を拘束する権限までないが、地方に関わる案件は地方の意見を反映しない限り、そのままは成立しない抑制機能を持たせている。これがヒント。今の二院制を前提に日本の参議院改革を考えると、分権国家づくりを国政の場で担保する仕組みを入れ込む、こが再考の府にふさわしい参院の姿ではなかろうか。

国会議事堂の中に「地方自治の砦」を築く、そうした改革を新たな国のかたちとして考えられないか。動き出した「憲法改正」の論議ではそうした視点もぜひ加えて欲しい。

 #国会改革 #憲法改正 #地方分権

 

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