2022年3月18日金曜日

進む少子高齢化に「分権化対応」待ったなし!

 

人口の動向はその国のあり様を示す大切な指標だ。最近は街中を歩いても、地方の商店街を歩いても、農村の畦道を歩いても、出会う人の3人に1人、ないし2人に1人ぐらいが高齢者であることが多い。また子供の手を引く親も少ない。連れていても1人の子を連れ歩く姿に出会うことが多い。

シャッター通りが増え、所どころ空き家がある。中心街なのに更地化されガランとした駐車場らしきものがいやに目立つ。その駐車場も空きが多い。このところ地方都市を歩いてみて、否が応でも人口減少と地方衰退の証のような風景が目に飛び込んでくる。

日本は12808万人(2008年)をピークに14年前から人口減少へ転じている。直近の数値では昨年の12534万人に対し、今年は65万人減少(前年2月と対比、総務省推計)。残念ながら、この減少幅は今後より大きくなると見られている。まもなく70万人、80万人、そして100万人と減っていく。

 人口減は様々な歪を生み、これ自体大きな問題だ。物流や公共交通機関におけるドライバー不足や、災害等の予期せぬ事態に対応する自治体職員の不足が既に起きている。今後、生活必需サービスを提供する「社会の支え手」の減少が一層深刻化する。

その対応、取り組みは一律にはいかない。自治体に関して後述するが、もとより人口減は必ずしも悲観論だけでみる必要はない。将来人口が3分の2になるとして、かりに労働力減でもハイテク技術を磨き、現在のGDP(約500兆円)を80年間ゼロ成長でも維持できるなら、世界で一番豊かな国になる。

これまでの12800万人が暮らし易いように整備した道路、橋、公共施設などの社会インフラを3分の2の人々で使うなら、快適で豊かな生活を営める。道路の渋滞も鉄道の混雑もなくなり、それぞれの家は広く使えるようになる。

問題は、それをどのように維持していくかだ。自助、共助、公助でいうと、公助が大きくなり過ぎていないか。20世紀に膨れるだけ膨れた国と地方の政府機構、行財政の仕組みをどこまで賢く畳めるか。いつの間にか日本は100兆円を超える国家予算となり、地方を合わせると重複を除いて170兆円を超える財政規模になっている。コロナ禍の異常な状況を除いても財政は膨張の一途だ。どこかでつまずく時が来る、筆者はそう見ている。

日本の人口減少の中身は、少子化と高齢化現象が同時進行している点が特徴だが、地域において地方創生を考える際、2つを分けて見なければならない。中部地域のある県で市町村の課長30名を集めて政策研修会の講師を務めた際、いろいろな提案に出会った。そこで感じた点がある。

 というのも、東京など大都市で求められる少子高齢化対策と10万人規模の地方都市や農村部でとるべき対策は全く違うという点だ。例えば、大都市の少子化対策には必ず待機児童問題の解決が出てくるが、地方にはそんな話はない。高齢化対策でも孤老死を防ぐため自治体職員が3日置きに「声かけ」に個別を回るといった対策などはない。むしろ、病院や買い物など街に出る足をどう確保するかが問題視される。

その研修会での少子化対策で紹介された、地方のある市の例は極めて具体的なもの。①就学前の子育て支援窓口の一元化、②義務教育終了までの子供医療費助成制度、③小学校施設内への放課後児童クラブ併設、④若者世代の移住促進事業(家賃の一部補助)、⑤IJUターン促進のための奨学金返済補助事業、⑥「出会いから結婚、妊娠、出産、子育てまで」安心支援パッケージ事業、⑦引き続き住んでもらえる新たな住宅施策、⑧地域と産業を楽しみながら支え合う「ひと確保」施策。

 これが東京など大都市になると、①小中学生の医療費全て無料、②保育園、幼稚園、学校の急増設、③待機児童問題の解決、④通学路の安全確保、防犯体制強化、⑤小学生対象のシルバー先生による職業体験授業など子供支援教室の創設となる。

 一方、高齢化対策はどうか。地方は①認知症予防や生きがい対策、②毎年体力テスト、認知テスト、③空き家対策、コンパクトシティ化、④インフラが老いる(更新対策)が焦点だが、大都市は①定年延長、高齢者雇用アドバイザーの創設、②高齢介護施設の大量建設など待機老人対策、③高齢者難民対策、④交通事故防止等。

 もちろん人口減少が本格化したとしても、そう慌てて「大変だ」「大変だ」と騒ぎ立てる必要はないかも知れないが、肝心なことは、地方都市と大都市では必要とされる対策の性格が異なるということだ。

 少子化、高齢化対策を有効なものにすること、それには現地で企画立案から実施、予算編成まで一貫してできる地方分権の推進はどうしても必要である。

往々にして霞が関、永田町での中央目線は一律の既成概念で物事を考え決めがちだが、現場は多種多様だ。一律にすると勢いカネの使い方のムダ、施策の非有効性が高まる。そうではなく、ここは実態に即して問題解決ができる仕組みになるよう大胆に改革すること。忘れ去られている地方分権改革の再起動が不可欠と考える。

 ♯人口減少 #地方衰退 #地方分権

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データ:総務省人口推計(2022.2.1)

2022年3月17日木曜日

人口減少で急増する野生動物とどう向き合うか

国民生活の安心、安全を確保する。それは政府の基本的な役割だが、対外的な安全保障、危機管理の話とは別に、身近な野生動物による危機から私達の生活をどう守るか、新たな問題が起きている。国土の7割を山林で占める日本。そこに生息する野生動物が冬眠から醒め、民家や近くに出没する季節がきた。

この頃、クマが出た、狸が出た、シカが増えたという話をよく聞く。どうやら日本の山は、人口減少に伴い、野生動物の楽園になってしまったらしい。野生動物にとって「楽園」であっても、農家にとっては農作物を食い荒す極めて深刻で厄介な問題だ。ハイキングなど山歩きをする人にとっても脅威だ。コロナウイルス菌の感染も野生動物から人間へだった。 

少し前、岩手の沿岸部の山村で聞いた話。「ここ数年、異常にシカが増え、7頭ぐらいずつ群れを成し、この小さな山だけで3つの群れがいる。それが果物や野菜だけでなく今や水田に降りてきた稲の穂まで食い荒らすようになった。イノシシ、サルと合わせこの3大野生動物問題をどうするか、われわれは頭が痛い」と。この話題は北海道から鹿児島まで。

NHKTVのクローズアップ現代でもこの問題を取り上げていた。過疎、高齢化が進む鹿児島県さつま町の話。春の収穫期になると、数十頭のサルの群れが農作物を目当てに下りてくる。1頭の若いオスザルが大根を食べ始める。それでも人は誰も追い払いに来ない。

数分後、仲間も集まりすべての大根を食べてしまった。農家の担い手が減る中、さつま町では小規模な畑で糖度の高い農作物を作る人が少なくない。そこで農家の人の話。「畑も荒れ放題、田んぼも荒れ放題。もう収穫ができない、作っても全滅だもん」と。

都市部で暮らす一般の消費者にとっては「そんなもの」といった程度で聞き流す話かも知れないが、農家の立場、農家数の激減する日本の現状からそうはいかない。しかも人口減の著しい限界集落や中山間地ほど、野生動物の楽園化が進みこれまで出没しなかったクマも近隣まで我が物顔で現れ平気で農作物を餌として食い荒らすようになっている。

農作物被害について、被害金額は約158億円、被害面積は約48ha、被害量は約458tとされる(令和元年、農水省調べ)。被害額はシカ、イノシシ、サルの順。
 この先、日本列島は人口減に伴い野生動物の席捲する島に変貌していかないか。中国武漢に始まるコロナ禍ももともとコウモリが感染源とされる。人の住まなくなった沖縄の尖閣諸島がヤギの大群で占拠されているように。日本全体の7割は山林が占められるが、この先凄まじい勢いで野生の「楽園化」が進むと由々しき事態になる。

彼らの生態はあまり知られていないが、イノシシの例だと、1日のうちの3分の2を休息に費やし、3分の1(7~8時間)を殆ど餌探しに使うとされる。以前、人の多い時代は山の中で薪(たきぎ)をとるなど、多くの人が作業をしており、イノシシは山際に近づくと人に見つかり追いかけられるので、人里離れて生息していた。

しかし今は山を下りても人を見かけない。山際の竹林も放棄され真っ暗で恰好の隠れ家。竹林から顔を出しても人の気配すらなく、代わりに山際に捨てられた白菜、レタスなど冬野菜やかんきつ類、誰も収穫しない柿、栗、ビワ、クワなどの放任果樹が散在している。ふだん木の芽や虫を漁っている彼らに取って、この作物残渣は瑞々しく栄養価の高いおいしい食物と映るらしい。確かに人間がつくった野菜や果樹は美味しい。

養魚池の魚や養鶏場のニワトリもご馳走だ。野生動物はおそらくゴミを漁ることで味を覚えたのだろう。餌が十分にあれば、数は増える。

たちは知らず知らずのうちに野生動物に餌付けを行い、誘引し、隠れ場所まで提供している。耕作放棄地の増加などはその誘因の最たるものと言えよう。

しかし彼らに「楽園」でも、農家にとっては農作物を食い荒す敵。この折り合いをどうつけるかだ。山梨県北杜市では猟友会から鳥獣捕獲実施隊を選抜し2017年度でシカ約1400イノシシ140、サル230を捕獲するなど(2017年度)、被害の最小化に向け努力している。

岩手県宮古市でも捕獲計画を立て猟友会から選抜した鳥獣被害対策実施隊に捕獲を委嘱している。ただ捕獲隊員の高齢化に伴い人員確保も難しく先行きが不安という。他の罠、煙火、忌避剤、柵、ロープなどの方法も加えているが、それでは間に合わない。農水省も鳥獣対策室などが自治体の支援をしているが十分とは言えない。

コロナ感染が野生動物からというなら、これだけ急に増えている野生動物が国内で新たな感染源とならないか。従来からの動物愛護の発想だけでなく、野生動物から人間を守る、そうした視点から環境省などは本格的に取り組んでもらいたい。

いずれこの問題は、“隠れた人口減少の新たな面”として鳥獣保護と農家保護と私たちの生活安全の確保といった多面から議論を深める必要がある。

#野生動物 #過疎問題 #耕作放棄地 #コロナ感染

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2022年3月13日日曜日

集中から分散へ、官民の知恵でデジタル化に総力を!

             ◇分散化へチャンスを活かす
 日本は今、コロナ対策に限らず、財政危機も人口減少も経済崩壊もロシア情勢も緊急事態といえる状況だが、国会論議を聞いていても緊迫感が伝わって来ない。現場感覚が乏しい。まして東京一極集中の問題は議論自体ほとんどない。コロナ禍が終息したとしても、経済再生だけの話に止まり、喉元過ぎれば熱さを忘れるでは困る。
 若者の受験シーズンは終わり、就職期だが、元の3密都市東京に戻してはならない。
日本はカリフォルニア州1州ほどの小さな面積。コロナ感染拡大はその0.6%に過ぎない首都東京を直撃。人々は得体の知れない感染拡大に怯えた。馬、船、徒歩の頃の区割り、47の区割りの中で知事らは「私の所に来ないで下さい」「私の所から出ないで下さい」と叫ぶのが精一杯だった。根本的な解決の糸口の見えないまま事態は推移している。
 モータリゼーション、高度情報通信網、網の目のように張り巡らされた三大高速網の中、経済も生活も広域化しているのに、47区割りの壁を高くし、それぞれ一国の気分で自分の城を守ろうとする。狭域化した47都道府県での打つ手の効果は極めて疑問。広域圏行政、広域圏政府を持たないことの限界がハッキリした。
 コロナの蔓延は大都市の「3密」が大きな要因。一極集中構造の弱さ、この解消なくして第2、第3のコロナに襲われても打つ手を持たない。本格的な分散論議が必要な時だ。
 
            ◇移住希望者を後押しする政策を!
 Uターン、Iターンなど若い世代の「地方への移住希望」が増える動きにある。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の調査(2020年5月)によると、
① 東京圏在住者の約半数が「地方暮らし」に関心を持つ。
② 地方圏出身者に限れば6割が関心を持ち、東京圏出身者の4割より高い。
 もう長距離通勤を余儀なくし都心のオフィスに集まらなくとも、仕事の成り立つ環境が整いつつあるという認識を多くが持ち始めた結果だ。
 移住先は今のところ東京圏と関東近郊が多いようだが、やり方次第ではもっと地方圏まで広がる。東京圏に住む20-30代の若い層の移住先は東京圏、地方圏が半々というが、40-50代の中年層になると東京圏より地方圏志向が上回る。移住先の生活として都市部にはない、ゆとりあるライフスタイルを望み、自然の魅力に惹かれるからだという。
 もとより、それを促進し定着させるには、雇用の場の拡大はもとより、医療、教育、文化など生活インフラの充実が欠かせない。この点、東京の持つ強みとの差は未だ大きい。この差を政策的に埋めていくことに力を注ぐ、それが国、自治体のやるべき課題。
 20代以下の世代では両親とも東京生まれがほぼ半数。団塊の世代のように地方にふるさとがあるという世代ではなく、東京圏にふるさとがあるという世代層の増加。
 この人々にどのように地方の良さを知ってもらうか。体験の機会拡大が大事では。高校や大学の進学先に地方を選ぶ仕組みを組み込む。古い話のようだが、戦前の旧制高校の仕組みはその動機付けのヒントになる。有名進学校を地方につくる、有名大学の地方分校をつくる。10代後半か20代前半の生活体験がその後の人生の選択に大きく影響する。
 
        ◇廃校舎、空き教室をサテライトオフィスに!
 また、通勤時間はテレワーク率の高い東京圏で減少しているが、このままの通勤時間の減少を望む人は7割近い。テレワークの拡大には「打ち合わせや意思決定の仕方の改善」「書類のやり取りの電子化」などの工夫も要るが、加えて社員にテレワーク補助として通信費の半額を会社が出す、それを政府が経費として非課税にするなどソフト面の税制による誘導策を加えたらどうか。
 地方はもとより郊外でも空き学校、空き教室が増えている。教育施設云々、補助金返還などと縦割り行政の発想を取り払い、地域の共有材として小中学校をサテライトオフィスに改装し、廉価に提供したらどうか。市町村長が決断すればすぐできる。
 デジタル庁はそうした改革を広げる契機となるはずだが、そうした声がまだ聞こえてこない。上から目線でなく、もっと現場を見よ!現場目線で民間、国民を巻き込んだ分散化の流れをつくることはできないか。官主導のデジタル化ではすぐに限界が来る。
♯サテライトオフィス #テレワーク #デジタル庁
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