2022年5月13日金曜日

「森林大国・日本」の新たな活路!

  日本は四方を海に囲まれ、列島の骨格は山からなる。国土の7割を山林が占める、世界有数の森林大国です。森林面積は国土面積の3分の2に当たる約2,500万ha(うち人工林は約1,000万ha)。これも人工林を中心に未だ増えています。ただ、手入れが行き届かず、山が荒廃しているところも目立ちます。

 人工林の半分近くは樹齢50年を超えており、切り時。資源を有効に活すか、伐採を進めるか、大きな岐路に立たされています。
 かつて「ひと山所有していれば一生食える」といわれた林業経営。それが盛んな時もありましたが、外国産材(外材)が高度成長期に大量に輸入されるようになり、国産材の価格は著しく下がり、林業経営者の倒産もあり、若者たちは都市部へ雇用を求める流出するようになった。林業以外に目立った産業のない山村地域では、林業の衰退とともに地域の活力も低下し、林業離れによる後継者不足、林業就業者の高齢化、山村の不便さもあり、限界集落化が進む問題を抱えるようになっています。
 
 ですが最近、朗報ともいえる新たな動きが出てきました。国産材の建築利用の裾野が広がり始めたことです。自治体など公共サイドがリードし始めています。例えば主要部分に木材を活用した公共施設の割合(木造率)は10年前約8%(2010年)に過ぎなかったものが現在は15%近く(2020年)に上昇し、3階以下の低層の公共施設に限ると30%に迫る勢いです。戦後に植林した人工林が利用適齢期を迎えるなか、資源を循環利用する脱炭素の地域づくりと相まって、国産材活用が大きな広がりを見せようとしています。森林大国日本の復活なるか、大いに注目されます。
 世界のOECD加盟37カ国の中で日本は森林率が3番目と高い国です。この特性を活かす方途をいろいろ工夫する時でしょう。10年前から公共施設などへの木材利用を促す法律が施行されていますが、10年前2割程度まで沈んでいた木材自給率は20年には4割まで回復しています。なかでも東北地方がリーダー役を果たしているようです。最近のデータでよると、公共施設への平均木材使用率は秋田県がトップで約35%、続いて岩手、山形、青森県と東北の各県が上位を占めています。
 
 秋田県の促進例だと、県が主導して県産材利用推進会議を設置し、木造化や内装の木質化になじまない案件は理由を付して会議に諮れといった具合に「原則木材化」を徹底する力の入れようです。ここ8年間につくられた県営125施設のうち7割を木造・木質にしているとのことで、さすが秋田杉でも有名な県だけのことはあります。
 周知のとおり森林は二酸化炭素(CO2)を吸収する特徴があり、木を燃やさずに使えばCO2を長期に貯蔵できる能力もあります。民間がつくる病院や学校を含め、多くの人が使う公共的な施設は木造の良さを訴えやすい環境になってきています。
 木造利用を促す法律は21年に改正され、民間建築物も利用促進の対象になっています。民間の事業者は国や自治体と協定を結べば、技術的な助言や財政支援も受けやすくなっています。ただ今後、木造率が1割以下しかない中高層建築物への需要開拓や鉄骨造に比べ15%もコスト高という克服すべき課題もあります。
 
 ただ、それはともかく、わが国の森林荒廃を防ぎ、限界集落化を抑え、なおかつ個人住宅まで含め「人にやさしい木造建築」を普及していくことは、森林大国・日本を復活させる新たな活路と言えるのではないでしょうか。海と山に囲まれた日本。改めてこの2つの資源を有効に活かす、これまでのやり方を見直すことで日本再生の一つの道が見えてくるのではないでしょうか。

 


 

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