2022年5月21日土曜日

各党は参議院の改革論を、ぜひ!

7月10日の参院選投票日に向け、各党の動き、候補者擁立が活発になって来ました。ただ、何議席とるか、数の話だけに終始し、「質」の話、つまり二院制における参議院の役割、改革すべき方向について全く話が出て来ません。マスメディアも含め論題の設定ができていない。

これでは一過性の政治ショーに終わる。それもそれほど面白みのあるショーではない。自民は自公で安定多数をと取れればそれでよし。他は政権構想など描く力もなく今より1つでも議席が増えればそれでよし。結局、1強多弱の構図は全く変わりそうのない政治ショー。日本はそうした選挙に大きな時間とカネをかけ政治空白をつくる余裕はないはず。

諸国をみると、上院にあたる第二院には幾つかの種類があることがわかります。①イギリスのように貴族制度をベースとして形成されたもの、②ドイツ、アメリカのように連邦制を基礎とするもの、③フランスのように地方自治体の代表としての側面を重視したものなどです。

日本の場合、衆参とも国民代表機関とされたうえで、選挙制度も似通っていて差別化はかなりあいまい。①でも②でも③でもない。あいまいなまま推移してきた。無いより益しか、あっても邪魔にならないか。政策論争的にも衆院選と衆院選の間の中間選挙といった性格以上の意義を見出すのが難しい。これではもったいない。

今の参院は衆院のカーボンコピーと揶揄されます。衆参院がねじれていた時はともかく、衆参とも自民党が過半数を占めると「同じことを2度やる」国会システムに堕してしまう。大きな国家の転換期、参議院の立ち位置、役割を見直す時です。

そこで1つ提案です。衆参両院の役割分担の見直しとして、例えば参院は「再考の府」「良識の府」として異なる観点から審議する。衆院は予算案や法案の中身と中心に議論するとして、参院は決算や行政監視に重点を置いて議論する、そのように議会運営を変えたらどうでしょう。

予算は政策を凝縮したものですが、政策のPDCAサイクルからいえば、P(形成)は衆院中心、C(チェック)とA(見直し)は参院中心といった分担はどうかという提案です。既に日本は右肩上がり社会は終焉しており、これからの右肩下がり社会は「あれもやります、これもやります」式の政治は通じない。「あれをやめます、これを見直します」式の政治への切り替えも必要となってきます。CとAの場面が重要度を増してくるということです。

日本の参議院改革の一つの方向はチェック、アクション、政策の見直しを役割とする。これまで日本は二院制をとりながら、参院は衆院のカーボンコピーと言われ、良識の府、再考の府と言われながら第2院としての独自性がなく、無用の長物、不要論すら言われてきました。この状態を脱するのは、衆院との役割を差別化することで立ち位置がハッキリした参議院に変える事ができる。これは憲法改正なくして、運用レベルでの改革で可能な方向ではないか。

第2は、地方の意見を国政に色濃く反映する院に変えていくことです。“地方のことは地方で決める”地方主権型の国づくりをめざす必要性は高まっているにも拘らず、国会でそのことを議論する場は殆どないのが実情です。それには、上院に当たる参議院を大きく変えたらどうでしょう。

そのヒントはドイツにあります。ドイツには一院制の連邦議会とは別に、副次的な立法審査機関として各州の代表で構成される「連邦参事院」がある。

国民の直接選挙で選ばれるのは下院に相当する連邦議会のみで、上院にあたる連邦参事院は各州政府によって任命された議員によって構成され、議席数は州の人口に応じて各州3~6名、その総数はたった68名からなっています。

基本的に下院に相当する連邦議会の権限が強いのですが、ただ、連邦議会を通過・成立した内政に関わる法案は必ず連邦参事院の審査に付されます。

この連邦参事院で修正・否決された場合には、この法案は連邦議会の再議に付され、その再議決によって確定する仕組みとなっています。つまり連邦参事院には、連邦議会の議決を拘束するまでの権能はないが、これをけん制する権能が賦与されている訳です。こうした考えを日本の参議院に入れたらどうでしょうか。

再考の府、地方の砦に加え、もう1つ、

第3として参議院を「長期展望」の府に変えたらどうかという提案です。

参議院は議員の任期を6年間に与えている。この長所を生かすことです。

衆議院は任期4年といますが、平均すると2.5年で解散がある。常在戦場と言われ安定性に欠け、中長期的な政策形成やその議論ができにくい。これに対し、上院に当たる参議院は任期も6年で解散もなく安定性に長けています。

イギリスの上院(貴族院)は長期展望の院の性格を有しており現実にそれを生かしている。残念ながら日本の参議院は議員のリクルートも業界団体、労働組合、衆議院落ち組、知事や引退者などに固定していることも影響してか、長期展望の論争を行う風土が欠落しています。ここを変えることです。

人口減少の進む日本は今後、統治機構の新たな仕組み、政府の役割見直しなど官僚組織を動かしていくための前提となる長期展望を行う必要性は高い。参議院は長期展望ができる、この長所を生かすことなくして参議院の存在価値はないということです。

例えば東京一極集中問題に参議院としてじっくり取り組む。これから首都東京は地震、豪雨、コロナ禍といった自然災害多発に加え、ヒトが老い、インフラが老い、経済が老いる、いわゆるトリプル「老いる東京」問題を抱えます。首都直下地震の襲来など厳しい局面も迎えます。

そこで参議院に東京のあり方長期展望委員会を常設し、これからの東京政策をじっくりと議論する。①東京の巨大化を続けるのか、②巨大化を否定する方向へ舵を切るかン宝庫転換の議論をする。明治以来、東京は日本の機関車であると巨大化を肯定する政策に終始してきましたが、大きく巨大化否定にかじを切る、そうした時代ではないか。これを地方の視野、世界の視野を入れじっくり政策に練り上げる、それが役割ではないか。

参院を再考の府、地方自治の砦、国家のあり方を展望する上院に変えたらどうか。この種の論争を激しくやる、だから私の当選を!と候補者は訴える。そうした選挙に変えよ。

#参議院選挙 #カーボンコピー #地方の砦 #再考の府

 https://www.sasakinobuo.com/

 

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